インプラントの基礎知識 その1
2021年07月12日
こんにちは、院長の市場亮志です。
今回からは私がインプラント治療について患者さんからよく質問をうける内容を解説していきます。
インプラントの仕組み
インプラント治療は歯を失った部分の顎の骨に、歯の根っこに代わる金属のスクリューを埋め込み、その上に人工の歯を装着させる治療法です。
金属のスクリューは「固定されたもの」という意味のfixture(フィクスチャー)と呼ばれ、チタンという金属で作られています。
チタンは骨と結合する性質があり、しっかり骨に固定されたインプラントは咬み心地もよく、違和感も少ないので天然歯とほぼ変わらない感覚を取り戻すことができます。
インプラントは大きく分けて3つの部分から構成されています。
上から、歯冠の部分の人工の被せ物
その下に、被せ物の支台になる部分のアバットメント
一番下は、骨に埋め込む部分のフィクスチャー
という構造です。(下図参照)
インプラントと天然歯の違い
決定的な違いは、骨との結合様式です。
天然歯には、根っこと骨の間に歯根膜という軟組織が存在し、この軟組織が歯と骨をくっつけています。
歯根膜にはそれだけでなく、噛んだ時の感覚を脳に伝えるセンサーの役割や、歯にかかる圧力を和らげるクッションの役割もあります。ですから天然歯というのは噛んだ時にほんの少し動くのが普通です。
インプラントにはこのような組織はなく、骨と直接結合しています。直接結合していると聞くとなにか丈夫なように聞こえますがそうではなく、歯軋りなどの強い応力に対してその力を逃がすクッション構造がありませんので、適切な対応をしないと骨との結合が破壊されてしまうこともあります。
ですからインプラント治療は定期的な噛み合わせのチェックが必要となるのです。
インプラントの利点
インプラントには多くの利点があります。
ブリッジや入れ歯と比較した場合の利点には次のようなものがあります。
①固定性がよくしっかり噛める
入れ歯は安定性が悪く、噛む力も1/3程度しかでませんので、なんでも食べれるというわけにはいきません。
②歯を削ったり、支えに利用したりする必要がない
ブリッジは歯を削らないといけませんし、入れ歯は残っている歯のどれかを支えにしないといけません。どちらも歯に負担をかけ歯の寿命を縮める結果となります。
③見た目や機能の自然感を回復できる
ブリッジでもそこそこの自然感は回復できますが、歯の欠損した部分は歯茎の上にダミーの歯がのっかっている状態になりますので、その隙間にものがつまったり話す時に空気が漏れるなどの不快感は伴います。
入れ歯に関しては見た目も機能も自然な回復とはほど遠いものになります。まずは違和感が大きく、せっかく作っても装着しない方も大勢おられるほどです。味覚を遮るので食べ物が美味しくありませんし、歯に引っ掛ける金属のツメはとても自然とはいえませんよね。
インプラントの利点としては以上のようなものがあげられますが、利点ばかりではありません。
次回はそのあたりも含めた基礎知識についてお話しさせていただきます。